左官のつらいこと・大変なこと
厳しい工期になりやすい
左官は、建築工事のなかで、建物内部の壁の造作や外の塀づくりなど、最終的に目に見える「仕上げ」の部分をおもに手掛けます。
たとえば壁であれば、大工が建物全体の基礎を組み、そこに貼り付けたボードの上に施工するといったように、左官は、ほかの職人の仕事が終わるのを待たなければなりません。
建築工事全体のスケジュールはあらかじめ決まっており、納期を遅らせることは基本的にできません。
天候不順や人繰りなどの関係で、前の職人の仕事が遅れることはざらにあります。
こうした事情から、ほかの職人の遅れのしわ寄せを受ける形で、厳しい工期に陥りやすい点が、左官のつらいところです。
限られた時間のなかで、ムリをして作業を完成させなければならず、夜遅くまで働いたり、休日を返上して連日の作業にあたることも珍しくありません。
締め切りに追われながらの作業は、精神的にも大きなプレッシャーがかかりますので、左官は心身ともに負担が大きいでしょう。
夏は暑く冬は寒い
建設途中の新築の建物の内部は、電気がまだ通っておらず、また設備も取りつけられていないため、空調や換気などは使用できません。
また、修繕やリフォームなどの既存建築の現場であっても、土やモルタルなどの素材が水分を失うと思うように塗れなくなるため、乾燥しないように空調などの使用は控えます。
このため、左官は、真夏にはうだるような暑さのなかで、真冬には凍えるような寒さのなかで、長時間にわたって働き続けなければなりません。
汗が滝のように流れ落ちる環境で、あるいは手がかじかんでうまく動かない環境で、高い集中力を保ち、繊細な作業をこなし続けるのは、少し想像しただけでもかなり大変であると感じられるでしょう。
ある程度は働くうちに慣れてきますが、新人や若手の頃は、つらい、しんどいと感じることが多いかもしれません。
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左官の悩み
左官は、あらかじめ練った素材を鏝(こて)に乗せて、壁などに塗り拡げるという、決まった動作を何度もくり返します。
イメージしにくいかもしれませんが、左官が扱う素材は、もともと重いうえ、粘り気を出すために多量の水を含んでいるため、一回分だけでも相当な重さです。
こうした作業を何千回、何万回とこなしていくうちに、どうしても関節組織には通常をはるかに超える負荷がかかって、徐々にすり減っていきます。
そのため、多くの左官は、肩やひじの痛みに悩まされます。
熟練の職人のなかには、身体はまだまだ動くけれども、肩やひじを壊して引退を余儀なくされるというケースも珍しくありません。
左官職人が長く働くためには、スポーツ選手と同じように、日頃からの体のケアが大切です。
左官を辞める理由で多いものは?
左官を辞める理由として最も多いのは、修業のつらさに耐えられずに、途中であきらめてしまうというケースです。
左官は、職人仕事という色合いが非常に強く、技術のほとんどは理論的に説明できるものではありません。
先輩や親方からも「口でいってもわからない。目で見て覚えろ」という指導を受けます。
頭ではなく体で、つまり感覚でつかまなくてはならないからこそ試行錯誤することも多く、悩みすぎて自信をなくし、途中で挫折してしまう人もいるでしょう。
しかし左官のなかには「仕事に面白さを感じたのは入職して5年が過ぎた頃」という人もいます。
左官を目指す人は、最初から一人前になるには時間がかかると覚悟して、辛抱強く仕事に取り組まなければなりません。